高層ビルの窓掃除は命がけで行わなければならない

biru_garasusouji

子どもが部活で居ないので、いつも以上に静かな休日だ。だからのんびりとリビングで寝そべって過ごしていると、たまには自宅の掃除を手伝えと妻に言われてしまった。確かに家のことは妻にまかせっきりだが、その代わりに自分は、外に出て家族を養うために働いている。たまの休日まで働けという妻に、怒りを通り越して呆れてしまった。私の仕事は高層ビルの窓掃除だ。命がけで行う仕事を普段からこなしているのに感謝の言葉すらなく、自宅の窓掃除をしろというのか。

妻から渡されたボロきれは、よく見ると数か月前まで、主に自分が入浴後に使っていたバスタオルだ。古びてきたと思ったらいつの間にか新しいバスタオルが用意されていたが、古いものは切り刻まれて掃除用にされていたのか。市販の洗剤を渡されたのでそれで窓掃除を始める。自宅の窓ガラスなんて、つく汚れもたかがしれている。窓ガラスの形状が多少複雑だとしても、高層ビルの窓ガラスに比べたら、大きさも構造も大変なことは何もない。

妻には届かない、上の窓のガラスも、子ども部屋に置かれたままになっている踏み台を使えばなんてことはない。そしてこの踏み台なら、上に乗ってふらついたとしても、危険なことは全くない。

高層ビルの窓ガラス清掃だと、窓清掃用の道具を使うことはもちろんだが、現場によりハシゴや脚立、ブランコなども使う。それらを正しく使いこなし、風の強い日、日差しの暑い真夏でも、常に危険と隣り合わせなので、自分の体調管理もしっかり行わなければならない。地上100メートル以上の高所でうっかり貧血なんて起こしていられないし、窓ガラスの清掃は見た目以上に力仕事なので、体力勝負なのだ。

たまの休日くらい自宅でゴロゴロして体力を温存したいところだが、妻を怒らせるともっと気力体力を奪われることになるのでおとなしく指示に従っておく。自宅の窓ガラス清掃なんて、自分にとってはホコリを払うようなものだからだ。